製作所忘備録

田中意匠製作所diary

Airbnb プロダクト 京都 京都造形芸術大学

現役芸大生が考えた、エアビーの「新しいサービス」が画期的すぎる!

更新日:

エアビーのビジネスはまだまだ進化する

Airbnb(エアビーアンドビー)は昨年12月より京都造形芸術大学との包括的な提携を結んでいます。この取り組みについては今年4月の寄稿でもご紹介させていただきました(『Airbnb(エアビー)が「芸大と手を組む」のには深いワケがある』https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63884)。

今回はそんな大学との取り組みの一つである、クロステックデザインコースで提供する寄付講座の「中間成果」についてご紹介したいと思います。そこではAirbnbを活用した非常に興味深くて新しいビジネスの可能性が見えてきたのです。

そもそも本講座では、Airbnbを活用した新しいサービスを考えるというテーマで、 Airbnb Partnersのメンバーであるオレンジ・アンド・パートナーズの代表取締役副社長で、京都造形芸術大学教授も務める軽部政治氏とともに講義を行ってきました。

最初の授業でAirbnbの紹介を行ったあと、学生はチームに分かれて、実際にAirbnbに宿泊するなどの体験を通して、自分たちなりのAirbnbを活用した、あるいはAirbnbを補完するようなサービス提案をまとめていきました。

これらの提案は教室の中での議論であり、ビジネスモデルや法的側面において整理されていない部分があるものの、とても興味深い提案が多く出されました。今回はその提案内容について紹介したいと思います。

1.思い出を地図上に残すサービス~ルニント(Runinto)~

まず最初に紹介したいのは「ルニント」というサービス提案です。

旅をしていると、素敵な人と出会ったり、とても素敵な建物の装飾や意匠や地元の人が通う美味しいレストランを見つけたり、あるいは緑の綺麗な空間や見晴らしの良い場所を、思いがけず発見することがあります。

しかしこうした人・もの・空間はガイドブックや地図アプリに載せられていない場合がほとんど。こうした旅先でふと出会う(=Run into)素敵な偶然を、目に見えるものも見えないものもログとしてマップ上に残し、他の旅人がそこを訪れるようにできるサービスがルニントです。

ドライブを旅に組み込む

地域の素敵な場所の開拓は、まずAirbnbのホスト(お部屋を貸す人)やゲスト(お部屋に泊まる人)が専用アプリに書き込む形で考えられています。このサービスは、“Belong Anywhere”、 すなわち誰でもどこでも居場所が見つかる世界を目指すAirbnbのビジョンに非常に親和性が高く、素晴らしい提案だと思いました。

人が見知らぬ土地を旅行するとき、ガイドブックには載っていないこのような特別な場所にアクセスできることで、より深みのある旅をすることができるようになるのではないでしょうか。

2.Drive

2つ目の提案は、ドライブを旅に組み込むというものです。地元に住んでいる許可を持っている人が旅行に訪れる人と一緒にドライブすることで、体験価値を共有するものです。

体験メニューとしては、 許可を持ったホストがオススメするコースや自由に行きたい場所を組み合わせるようなコースが考えられていました。プレゼンでは東京在住の起業家が京都でタピオカのお店を開きたいということでDriveを利用し、タピオカの有名店を回るといったイメージビデオまで作成されるなど、とても完成度の高いプレゼンでした。

提案されたドライブサービスを日本で展開するためには、例えばホスピタリティの高さで世界的に有名なタクシーや公共交通機関等との連携による新たな体験サービスとしての可能性も考えられるのではないかと感じました。

3.文化体験サービス

3つ目の提案は文化体験サービスです。

Airbnbは現在すでに様々な体験サービスを提供しており、例えば、日本ではお茶・お花・陶芸などの日本文化の体験も多く提供されています。しかし、これらの体験の多くは半日程度で終わるものが中心となっています。そこでインバウンドの旅行者がより深く、かつ正確に日本文化を理解するための取り組みとして提案されたのが、文化体験のサービスです。

「旅行者はホテルの朝食を食べない」問題

より長期間の、あるいはより専門的な内容に触れることができる体験サービスの構築には私も一つの可能性があるのではないかと思っています。以前、ある蒔絵作家にお話を伺ったときには、本当の蒔絵を体験できるよう、1週間くらいのコースを作りたいと言われたことがあります。

実際に蒔絵を作るためには、途中で漆を乾かすというような工程が入るため、一連の作業を最初から最後まで体験するのにはそれぐらいの時間がかかるということでした。一方、一日中作業を行うわけではないので、午前中は蒔絵の作業を行い、午後は観光体験を提供する ということも可能なため、新しい観光の一つのあり方として魅力的ではないかと思った次第です。

4.朝食サービス~Breaky

4つ目の提案は主婦やおばあちゃんによる朝食提供サービス~Breaky ~(ブレキー)です。

J.D. パワー2018年日本ホテル宿泊満足度調査によると、ホテルに宿泊する日本人旅行客のうち年間1.5億人が朝ごはんを抜いています。合わせて旅行客も宿泊時にホテルの朝食を食べないという統計もあります。また「平成29年国民健康・栄養調査結果の概要」によると日本人の朝食欠食者数は1583万人に上ります。 一方、多くの方が毎日、家族のために朝食や子供のお弁当を作っています。

そこで、こうした朝食を食べない旅行中、あるいは一般の日本人などを対象に、自分に合った朝食を探す人と朝食を提供したい現地の人同士をつなぐことができないかという視点で考え出されたサービスが Breakyです。学生の提案ではサービスを考える際によくリサーチがされており、ペルソナも細かく設定され、さらには動画も制作するなど、とてもよく作り込まれた提案となっていました。

朝食を提供する人はちょっとしたお小遣い稼ぎもできて、旅行者や単身者は家庭料理が食べられるという点でとても魅力ある提案であると感じました。

エアビー×ベビーシッター

5.アートの対話型鑑賞ができる宿泊施設

5つ目の提案はアートの対話型鑑賞ができる宿泊施設です。最近、宿泊施設とアートが一体化した施設が増えてきており、Airbnbも京都造形芸術大学と提携して、学生のアート作品を宿泊施設に飾るという取り組みを始めています。

学生からの提案では、ただ宿泊施設にアートを飾るということからさらに一歩進んで、アートをより深く鑑賞するための対話型鑑賞という仕組みを体験として提供することが提案されました。

その仕組みとは、美術館・画廊がアート作品を貸し出し、宿泊ホストもしくは美術 館・画廊が派遣する人が宿泊者とともにアート作品を鑑賞し、宿泊者同士のディスカッションをファシリテートするというものです。

一般的な旅行者で必ずしも芸術に造詣が深くない方々にとっては、 アート作品、特に現代アートなどを前にしたとき、どのようにその作品を鑑賞していけば良いか、分かりづらいことが多々あるのではないかと思います。

そうした中、グループで話し合いながら対話を通して鑑賞を行い、純粋に作品を楽しむ体験を他人と共有できるような宿泊施設があることで、よりアートを身近に感じてもらえるきっかけを作ることができるようになるのではないかと感じました。

6.Airbnbを活用したベビーシッターサービス

6つ目のチームによる最後の提案は、ベビーシッターサービスです。 Airbnbの宿泊施設を使って子供が預けられる、一時的な保育のニーズにマッチングするような仕組みを構築したいというものです。

ベビーシッターサービスは、潜在保育士と子供を預けたい人をマッチングして、Airbnbの宿泊施設を借りてベビーシッターとして子供を預かるというものになります。安心して子供を預けられるように、子供を預ける人が合意した場合、室内が映るカメラを設置するなどの工夫も合 わせて考えられていました。

この提案については、また地域住民だけでなく、例えば買い物をしている間だけ預かってくれるなど、旅行で訪れているファミリーにもサービスを提供できれば、より可能性が広がるのではないかとも感じています。

新しいサービスの誕生へ

大学の後期授業では、学生からのこれらの提案を実際のサービスとしてより具体的に検討していくための取り組みを進めていきたいと考えています。

まずサービス構築の候補として、6つの提案のうち1.ルニント、2.Drive、4. Breaky、6.ベビーシッターサービスの4つの提案を採用しました。

ただしルニントとAirbnb Driveについてはディスカッションの中で相互補完性があるのではないかという話になり、双方のサービスを組み合わせて一つのサービスモデルを授業としてディスカッションすることとしました。

今後、後期の授業ではサービスモデルの経済的、社会的、技術的課題を整理していければと考えています。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66325

-Airbnb, プロダクト, 京都, 京都造形芸術大学
-, , ,

Copyright© 田中意匠製作所diary , 2025 All Rights Reserved Powered by STINGER.