
美しい鶴やかわいい鶏 名画の“鳥”に出会う
京都の奥座敷として人気のエリア、嵯峨嵐山。渡月橋や竹林などの散策が有名でいつも多くの観光客でにぎわっている。
その風光明媚な地を静かに堪能できる場所としておすすめなのが、2018年にリニューアルオープンした美術館「嵯峨嵐山文華館」。
今、“鳥”をテーマにした「いろトリどり 描かれた鳥たち」という、耳にするだけでちょっとワクワクする展示会を開催中だ。
かわいい鳥たちが大集合。“色とりどり”と“鳥”を掛けたタイトルが楽しい


あの伊藤若冲の名作を 並ばずに鑑賞できる
江戸時代から現代までの61作品が、前期(~2019年9月9日[月])、後期(2019年9月11日[水]~10月20日[日])の二期に分けて展示される。
まず、1階展示会場で最初に出迎えてくれるのは、近年、絶大な人気を誇る江戸中期の天才画家・伊藤若冲の水墨画と彩色画だ。

若冲の水墨画は、竹の先がくるっと回った表現が自由でのびやかな《竹に雄鶏図(ゆうけいず)》に始まり、「筋目描き」と呼ばれる墨のにじみの効果を生かした描法で、鷹特有の“ガッチリ&フワッ”とした質感を見事に表現した《鷹図》。
そして、若冲が最晩年の80代に手掛けた《双鶴図(そうかくず)》が並ぶ。

絵の具を使わず、墨の濃淡だけで表現しているが、鳥の持つ生命感や、ツヤツヤとした質感を表現しているのは、さすが若冲!
彩色画《紫陽花白鶏図(はくけいず)》は、本展覧会のなかでも目玉ともいえる若冲の初期作品。

地面にうずくまる白い雄鶏の精緻な表現が素晴らしく、頭上には雄鶏を優しく覆うように、紫陽花が満開の白い花を咲かせる。
太湖石の穴から紫陽花が姿をのぞかせ、存在を主張しているのも、若冲らしいおちゃめな表現。

本展覧会の特徴は、作品解説のそばに用意されているQRコード。これをスマートフォンで読み取ると、なんと描かれている鳥の鳴き声が流れる。
“鶴”で試してみると、「クワッー、クワッー」という声が響く。
「鶴ってこんな声で鳴くの?」という意外な発見と、自分が久しく鳥の声を聞いていないことにハタと気付く。童心に帰って楽しめる、なんとも楽しい仕掛け。
ちなみに、作品に描かれる鳥の識別には、山科鳥類研究所の協力を得たという。

観る人に向かって シュールな鶴が飛んでくる
次の展示エリアに進むと、若冲と同時代の江戸中期に活躍した円山応挙やその高弟・長澤芦雪、俳人で文人画家の与謝蕪村、郡山藩士で文人画家の柳沢淇園(きえん)などの作品が展示。


縦長にデフォルメされた富士山と、遥か遠くに浮かぶ真紅の太陽が描かれた、長沢芦雪の《富士越鶴図》は、十数羽の丹頂鶴が列をなし、グングンとこちらに向かってくる様子がシュールで、列から少しはみ出た一羽の鶴の存在が、笑いを誘う。

「鶴の首はいずれもZ型に描かれていますが、このように首を曲げるのは、サギの飛び方です。実際のツルは首をまっすぐにして飛ぶのです」
当館の学芸課長、岡田秀之氏は実際の鶴との違いについて語る。

若い女性が、結ったばかりの髷の様子を合わせ鏡で確認している姿を描いた作品は、近代美人画の大家・上村松園の《鴛鴦髷(おしどりまげ)》。
鴛鴦髷とは、おしどりの雄の尾羽の形をイメージした、幕末から明治にかけて若い女性の間で流行した髪型だ。

鳥だけでなく、鳥をイメージさせる作品も展示されており、このほか、着物や帯の柄に鶴の文様が描かれている美人図など、“トリ探し”がゲームのように楽しめる作品が用意されている。
殿様大名のよう⁉ 大広間で気分は「絶景かな」

2階に場所を移すと、そこは開放感あふれる120畳の大空間!
小倉百人一首の競技カルタの大会も行われるという「畳ギャラリー」には、明治から現代に描かれた作品が展示されている。

さらに、全長32メートルの板間の廊下からは、渡月橋を遠景に、大堰川(おおいがわ)を眺めることができる。
春は桜や新緑、秋は紅葉、冬は冠雪も楽しめる、絶景ポイントだ。


いろトリどり 描かれた鳥たち」
会期 前期2019年7月27日(土)~9月9日(月)
後期2019年9月11日(水)~10月20日(日)
会場 嵯峨嵐山文華館
所在地 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11
開場時間 10:00~17:00(入館~16:30)
休館日 毎週火曜(祝日の場合は翌日)、
年末年始、展示替えの期間
料金 900円
http://www.samac.jp/